しめじ80%

わたしがわたしになるまで

彼女と蓮舫さん

 

就職活動において、彼女はひとつだけ思い残したような気持ちになっていることがある。

 

それは彼女が大学三年生になったすぐの春の出来事である。

 

蓮舫さんが大学で講演会をするというのだ。

 

彼女の学校では年に数回講演会が開かれ、過去にも声優の田中真弓、北川悦吏子、山口勝平、小泉進次郎など、興味とスケジュールの合うものは参加していた。

 

最後に質疑応答があり、各人に「休日の息抜き方法は?」などという、本編に関係もなく、専門分野でもないような話を質問しようと毎度手をあげてた。

当たったことはなかったが。

 

しかし、その時初めて、質疑応答があたったのだ。

 

残念ながら、その時の蓮舫さんの講演会の内容は今となっては彼女もすっかり記憶から消えてしまったが、その時の記憶は今でもしっかり覚えていた。

 

「私は就職活動を控えていますが、なにかアドバイスはありますか?」

 

蓮舫さんは、彼女の質問をきいて、ほんの少しだけ間をとったのちにすぐにマイクを取った。

 

「ぜひ中小企業にも目を向けてみてください」

学生は大企業にばかり目を向けがちだが、見つけにくいだけで中小企業にもいい会社はたくさんあるということだった。

 

その時は、質問してもらった事に興奮していたが、年を経ることにその言葉がじわりじわりと染みてきている。